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被相続人の預貯金の使い込み

1 被相続人の預貯金の使い込み

ご相続の相談を受ける際,非常に多いのが「亡くなったお母さんの預貯金を,長男が勝手に使い込んでいたようだ」といった,被相続人の預貯金の使い込みのご相談です。被相続人が亡くなり,遺産分割協議を行う中で発覚することが多いようです。

そのため,ご相続の一環としてご相談にいらっしゃる方が多いのですが,このような場合,本来の法的手段としては,家庭裁判所で行う遺産分割調停ではなく,不法行為または不当利得の問題として,地方裁判所又は簡易裁判所で争うことになります。以下,ご説明いたします。

2 不法行為と不当利得

被相続人の財産を,被相続人の生前,何者かが被相続人に無断で出金し使い込んでいた場合,被相続人が健在であれば,自らその者に対し,不法行為による損害賠償請求もしくは不当利得返還請求により金銭を支払うよう求めることができます。

使い込みが被相続人の死後に発覚した場合には,生前被相続人が有していた請求権を相続人が法定相続分に応じて相続したと解され,相続人が不法行為もしくは不当利得に基づき,その者に対して使い込んだ金銭を支払うよう請求することができます。

不法行為を主張するか,不当利得を主張するかを選択するにあたり,一番大きな違いは時効です。不法行為は,当該行為を知ってから3年,不当利得は当該行為の日から10年で時効とされています。

不法行為の場合,訴訟になった際弁護士費用として損害の1割が認められるのが通例であることから,時効の問題がなければ不法行為を主張したいところですが,多くの場合時効との関係で不当利得での主張となります。

3 どのような証拠が必要か

預貯金の使い込みのご相談は非常に多いのですが,実際に訴訟まで行うケースはあまり多くありません。その理由の一つは,立証の困難さにあります。

不法行為であっても不当利得であっても,①相手方が預貯金を取得したこと②①の取得が被相続人の意思に反していたこと,を立証する必要があります。

①については,預貯金が減っていることを指摘しても,「知らない」「被相続人が自分でおろしたのではないか」などと言い逃れされてしまうことも少なくありません。
もし①については相手方が認めたとしても「被相続人が,介護のお礼に受け取ってほしいといった」「被相続人に言われて〇〇の支払に充てた」などと言われてしまうこともあります。

このような言い逃れをさせないためには,十分に証拠を集める必要があります。では,どのような証拠が必要なのでしょうか。

通常は,生前の被相続人の預貯金口座の取引履歴や出入金伝票,被相続人のカルテや介護記録等が証拠となります。これらの証拠書類を分析しながら,出金が行われた状況を分析し,被相続人の意思に反して勝手に引き出されたことを主張していきます。具体的にどのような点に着目して分析していけばよいかは,事案に応じて他の証拠資料と照らし合わせながら検討することになります。

4 まとめ

取引履歴をとったら不審な出金があったけれどどうすればよいかわからない,あるいは使い込みがあるのは明らかなので取引履歴を取得するところから弁護士に依頼したい,という方はこの分野に詳しい弁護士にご相談ください。